京王線ジョーカー乗客刺傷事件法廷画
服部恭太被告人(2023年/東京地裁立川支部にて)
2023年6月26日に東京地裁立川支部で行われた京王線乗客刺傷事件の初公判を傍聴しました。服部恭太被告人(26)は一昨年のハロウィンの日に、走行中の京王線電車内で男性(72)の胸部をナイフで刺したほか、ライターオイルを使って火をつけ、乗客12人を殺害しようとした罪に問われました。
被告人は犯行当日、金髪でバットマンのジョーカーに似た派手な服装をしていましたが、法廷では黒髪の丸刈りに黒いスーツ姿で現れました。冒頭陳述では、被告人の犯行動機が明らかにされました。中学生時代から交際していた女性と同棲していたが、女性から別れを告げられ破局、その半年後に女性が別の男性と結婚したことを知り、自分の人生に意味があるのかと疑うようになり自殺を試みたとのことです。
自殺が未遂に終わったため、確実に死ぬために大罪を犯して死刑になろうと考えたそうです。起訴事実については大筋で認めたものの、車内に火を放ったことが乗客12人への殺人未遂に当たるのかについてはわからないと述べ、一部を争う姿勢を見せました。
この自己中心的な犯行に対し「死刑になるためという動機や経緯は強い非難に値する」と指摘する検察官。28日の法廷では、胸を刺された被害者の男性が証人として出廷し、後遺症で手足が不自由となり、字を書くことや食事が大変になったことを証言しましたが、被告人からの謝罪はなく、ただ空を一点見つめるのみだったとのことです。
インフラを攻撃し、一人の男性の穏やかにすごせるはずだった老後の人生を台無しにした身勝手な被告人には、今後の裁判でどのような判決が下されるのか注視したいところです。(2023/7/4現在)
その後の判決公判をうけて
2023年7月31日に服部恭太被告人の判決公判が東京地裁立川支部にて行われました。「自分勝手な理由から偶然電車に乗り合わせた多数の乗客の生命を無差別に狙った凶悪で卑劣な犯行」として25年の求刑に対し、懲役23年の刑が言い渡されました。
裁判の争点は放火が乗客12人への殺人未遂罪に当たるか否かでしたが、裁判所は10人の殺人未遂罪成立を認め、残りの2人は危険な場所にいたかどうか合理的疑いが残ると判断したようです。
閉廷前に裁判長が被告人に語られた「苦しくても生きて、きちんと対応して、償いをすることは忘れないでください」という説諭が印象的でした。
被害者の方々の心痛を思うと23年という懲役期間が妥当なのかどうなのか議論が分かれるところではありますが、決して短くはない期間だと思います。
けれども決して順風満帆ではなかった被告人の半生に思いを寄せて「苦しくても生きて」と語る言葉には重みがあるように感じました。被告人の心にも届ければよいけれど…と思いながら法廷を後にしました。(2023/8/4追記)
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