日本では、刑事訴訟規則第215条及び民事訴訟規則第77条により、 裁判中に裁判長の許可を得ずに法廷内の写真の撮影が禁止されています。
マスコミが申請すると、報道機関の代表カメラが、被告人・裁判員等の入廷前に法廷に入ることが許可され、裁判官や弁護士などの映像が撮られます。
この「あたまどり」撮影には、通常では2分間、最高裁判所では3分間の時間が与えられています。テレビのニュースで流れる法廷内の映像のほとんどがこの「あたまどり映像」です。
それによって「どういう場で誰に裁かれるか」は伝わるのですが、肝心の被告入廷から退廷までの様子をカメラが収める許可は、通常おりません。
そのために裁判中の被告の様子、挙動を報道する一手段として、法廷画が活躍します。
法廷画は単なる似顔絵ではなく、裁判中の様子を写すカメラ映像の代わりとして、被告の姿、場の空気などを伝えるために存在しています。
一般傍聴席に座り、社会的に何かしらの影響を与えた被告が、法の前で今どのような態度で裁かれているのかを、穴が開くほどに観察しスケッチブックに写す、その人間のことを法廷画家と呼び、描かれた作品はその日のテレビのニュース番組や翌日の新聞を飾ることになります。
そうして視聴者の方々は世間を騒がせた凶悪犯や汚職政治家が、その後どのような姿、どのような態度で裁かれたのかをビジュアル情報として得られます。
今や法廷画は裁判報道には欠かせない重要なエレメントのひとつだと思います。 |